酔ったふりして、知らないふりして、僕はあなたに問いかける。
「同性性交(ホモセックス)てえ、きもちいいらしいですよお」
僕は知っていた。青木さんが同性愛者(ゲイ)で、経験があって、今は特定の相手がいない事。
僕は恋を知らなくて、でも青木さんのことばかり考えて、夢の中であなたに抱かれてから、意識している。男同士のセックスの仕方を調べた。その日からアヌスを拡張してきた。
初恋だった。
自分が同性愛者(ゲイ)だと知った。
不特定の中の一人でよかった、青木さんの特別になりたいだなんて思わない。
そういう目で見て欲しかった。
抱かれたら、何かが変わると信じていた。苦しいほどの胸の痛みが、眠れぬほど脳を覆うあなたの表情が、不意に触れられた肩の熱い感触が、溶けて体に馴染むのなら。
恋が、悩ましいものではなくなるのなら。
「いいの?」
ドキドキした。
馬鹿になる。
何度も夢想した青木さんの手が僕の肌を遊んで、こそばゆい。かれの匂いがする。冷たい満月を冷やしてから甘くとろかす匂い。
「あっ」
こえが出てしまうものなのか。いま、酷く恥ずかしいことをしている、それを自覚してしまう。こえを我慢しなくては。恥ずかしい、でも気持ちが良い。かれが何か云って、刺激は強くなって、逃げられなくて、なにもわからない。
「は、あおきさ……」
つながる。性器にされていく。こえが漏れる。指が暴いていくのははじめての場所で、処女。
これ以上はいけないと思った。僕は逃げ腰になって、ずりずりと布団を上がるけれど、そこを捕まえられて足を抱えられる。
青木の性器が見えた。
あんなに大きくて、太いものなのか。他人の性器なんか知らなかった。
こわい。
「あおきさ、青木さん、まって」
「待てないよ。僕も気持ちよくなりたい。気持ちいいんだろ」
「青木さ、むりですよ、だめです、だめ……」
僕の言葉を無視して、ひたりと触れた肉は、何かを破くように、僕の中に、入る。
「ひあっ! あっ!」
内臓が押し上げられて、おなかが苦しい。ぐちゃぐちゃにされてしまいそうだった。涙が知らないうちに流れて視界を攪拌させる。その向こうで、青木さんが真剣な顔でこちらを見ているのが見えた。気持ちいいのかな。それはわからない。こえが勝手に出る。
いま、セックスしている。
(望みがかなった)
「あぐ、あっあっ!」
「そろそろいきそう」
「ひあっ! あっ」
僕で射精してくれるのなら、きっと気持ちが好いのだろう。そうしたら僕を選んでくれるだろうか。僕が好いと、褒めてくれたりするか知ら。
遠くまで揺らされる中、僕はぼんやりとそんなことを考えた。体は青木さんについていくのでやっとで、整然と考えられない。
青木さんのしらない一面を知っていく。
「気持ちよかった?」
そう聞かれて僕はなんて答えていいか考えてしまう。この返答は重要だ、良く言葉を選ばなくては。でもまだぐちゃぐちゃになった頭の中ではそんな冷静なことは考えられなかった。気持ち良かったのか、わからない。ただ必死に受け入れていた。けれど、また抱いて欲しかった。今わからない快楽を、ちゃんと知りたい。
青木さんにせかされて、僕は押し出された言葉を零す。
「今度いつします?」
東京に来たばかりの頃、生活の勝手がわからないと零したら、青木さんが土地案内をしてくれた。青木さんの下宿は水道橋、僕は九段坂で、生活圏が被っている。行きつけの大衆食堂や万屋を教えてもらい、小さな居酒屋に入った。
「青木さんていい人なんですねえ」
「そうでもないよ。いや……困ってるひとはたすけたい。そんなところ」
「困っててよかったです。今度お礼しなくちゃなあ」
「そんなのいいよ」
「僕がお礼していい気になりたいだけです」
青木さんは酒を飲むとすぐ赤くなるから可愛いと思う。そんなに飲まないと云っていた。僕も飲めるわけではないから体質まで気が合う。二人とも潰れてしまったら帰れないから、僕はお酌ばかりしていた。
「鍵、尻ポケットにある」
「え?」
「酔いつぶれたら……益田君が頼りだから……」
「ああ、はい。頼ってください。え、僕青木さんち知りませんて」
「大丈夫、すぐそこ」
二人ともふらふらしながら夏になる夜を徘徊する。青木さんが抱き着いてきて、僕はふらついた。
「益田君細いね」
「よく言われます」
「いいからだだね」
「青木さん酔ってますね」
「いいからだだ」
「あおきさん、」
ぎゅうと深く抱きつかれて、僕は倒れそうになる。夜の路地裏で、おとことおとこが抱き合って、ふらついている。チークダンスみたいだ。
僕は嫌と思わなかった。ドキドキしている。どこかの生娘みたいに、きっと顔を赤くしている。暗がりの顔はあまりよく見えなくて、月明かりが指した時に、青木さんの童顔が浮かんでは消えた。そんな顔をしていたっけ、と思う。一重の瞳がまっすぐに僕を見て、射抜かれる。
「益田君て、静かにしてると可愛い顔してる」
「え、」
「かわいいね」
そういって笑うから、僕の心臓が速まってしまう。
「げ、下宿どこです?」
「ここ」
「あ、ここ……」
「ありがとう。寝てく?」
「い、いえ」
青木さんが云っていた通り、尻ポケットからカギを引き抜いて、ドアーを開ける。
「かぎ……」
僕が離れようとしたら、青木さんは引っ張って僕を抱き寄せる。英国人みたいに深いハグをして、にっこりと笑った。いい匂いがした。
「益田君は、いい人だね」
「はあ」
「またね」
そう云いながら手を振る青木さんを振り返りながら、僕は帰途につく。
酔いがすっかり醒めてしまった。
胸の高鳴りは消えない。
その日からだったのかもしれない。青木さんは僕の中で特別になっていて、意識しなければならない人になっていた。
まだお礼は、していない。
「青木さん捜査で骨折とかしてたんですか。危ないなあ」
「益田くんも危ない刑事やってたんでしょ。骨折の一つや二つ」
「そんなあぶないこと滅多にないですよ。青木さんは正義漢だからなあ……」
鳥口さんは青木さんはねエ、何て言って刺身をつつきながら笑っている。三人で飲むはずだったが青木さんが急な事件で来れなくなった。僕は本人がいないことをいいことに鳥口さんに質問攻めをしていた。
「益田くんてわかりやすいね」
「へ? 何がですか?」
「益田くん、青木さんのこと好きでしょう」
「好き? え、なんですかそれ」
「うふふ」
「す、すき?」
好きってなんだっけ。鳥口さんは笑っていて、僕の肩を二三度叩いた。
「だってさっきから青木さんのことばっかり聞いてる」
「それは、その」
好きって、恋愛対象として、思っているということ。
「だって、おとこですよ、僕」
「おとこがおとこ好きだっていいじゃないすか。坊さんだってそうだったし」
「と、鳥口さん……」
「そんな泣きそうな顔しなくても」
僕は俯いて好きという言葉を反芻する。あの日から今日まで、青木さんのことをずっと考えていた。ほとんど何もしらないかれを、自分の中で形作る。思い返すのははにかんだ笑顔で、触れた指先。これが、好き、ということ。
初恋。
「僕、青木さんのこと、好きだったんですね……」
「え、本当にそういう好き、なの?」
「なんですか、カマかけたんですか、人が感傷に浸ってるのに……」
「まあまあ。悪いことじゃないっす。僕は応援しますよ。そんな益田君にいい情報をあげるんで、喜んでください」
「なんですか」
鳥口さんは手帳の切れ端を切り取って、どこかの住所を書きつけた。
「青木さんを知るためのヒント。あ、出所は秘密でおねがいしますよ。益田くんが自力で調べたってことで」
「新宿の店? 行けば分かりますか?」
「頑張って探偵さん。分かるように努めて」
「はあ」
にこにこしている鳥口さんの癖のある字を見つめながら、僕は一口酒を呷った。秘密と云われて調べないわけにはいかない。空想の向こうの青木さんが、微笑んだように感じた。
セックスして変わると思っていた恋の重さは、増して腹にのしかかってくる。抱いてくれる青木さんの顔はかっこよくて、益々好きになってしまう。不特定の中の一人でいいと遠慮していた欲望は、ただ一人の特別になりたいと傲慢に肥大していた。
「好き、すきだな……」
四畳半の部屋で布団を抱きながら、恋する女子みたいにのたうち回る。布団から青木さんの匂いがする気がした。かれが好きだよと云って、抱きしめて、そうしてキスをする……、その瞬間まで夢想した。好き、好き、好き。
「好きだって、」
そういえば好きだって云っていない。二人は何の確認もなしに、体の関係を続けている。
「好きって、云ったら」
好き、は、もしかしたら禁忌(タブー)かもしれない。青木さんは、体だけの関係が好いのかもしれない。だって僕は怖くてセックスを試すことしか最初云わなかった。気持ちも何も、ただの好奇心の為に青木さんを誘った、ことになっている。
好きだと云って、要らないと云われたら、体の関係も終わってしまう。
漸く快楽を覚えた。もう少ししたらきっと青木さんにもっと奉仕できる。そうしたら喜んでくれるだろうか。
でも好きという気持ちは無くならない。
恋人になりたい。
「ふりでも、いいから……愛人でも、いいな」
そこまで考えて、恋愛でもなく、教育されるおとことおんなの話が脳裏に浮かんだ。
「恋人ごっこ」
この関係を規定するのではなく、関係の上に演技的な契約を結べば、二人の間を変えることなく恋人の関係ができる。そうすればセックスだってできるし恋愛のあれやそれができるじゃないか。
我ながらいいことを考えた。
明日、何でもないふりをして云ってみよう。そうしたら、もっと、好きだという恋情をぶつけても許される。それは演技で、ただのごっこ遊びで、本質にはなにも関係のない事。
そうして青木さんが受け入れてくれるようになったいつか、ちゃんと、告白すればいい。
臆病だな、そう思う。保険を二重三重にかけてしか、動けない。けれどそれが自分だ。
「恋人、ごっこ」
布団を青木さんだと思ってきつく抱きしめた。きっと静かな顔で、いいよ、と返事をしてくれる。淡白なかれのことばが、好きだった。
キスをした。
恋の期限を決めた。
くちびるが濡れて、唾液が混ざって、かれの匂いが浸み込んでいく。もっと深いところまで混じり合っていたのに、その触れるだけの交わりが一等特別に感じる。
魔法をとかす、まじない。
漸く、青木さんの目が僕に向いてくれたようだった。
「なんだいご機嫌だねエ益田君」
「はあ。気分はいいですよ」
探偵社の掃き掃除をしていたら和寅さんがよこからちりとりをだしてくれた。
「天気も良すぎるし調査も順調だし、今日はいい日です」
「簡単でいいねエ。先生はふてくされてると云うのに」
「何かあったんです?」
和寅さんはにやにやわらってソファに座った。
「フラれたんだありゃ」
「フラれた? 色恋沙汰すか」
「ふふふ。そんなことあったら一大事だがね。猫だよ猫。お気に入りのノラ猫が飼いネコになっちまったらしくね、首輪がついてるッってえことで。猫もわかってるんだかで触らせてくれないんですと」
「はあ」
「人のもんに手えだしちゃだめだ」
当の本人はどこかに遊びに行ったか何かですでにいない。榎木津さんのことだから関口さん辺りを虐めてすぐにけろっとするんだろう。簡単でいい。
人のもの。
僕は今、青木さんのものなのだろうか。青木さんは意識してくれているかわからない。
ほかのおとこと寝たって云ったら、青木さんは、嫉妬してくれるだろうか。
試してもいいかもしれない。
青木さんが通っていたバーにいって、おとこをひっかけて――。
不義だ。
叱って欲しかった。そうしたら少しは僕のことを想ってくれているってことだから。
真昼間にとんでもないことを考える。よくない。
僕は頭を振って塵を掃き寄せる。塵取に集めて、よくないものを処分するようにごみ箱に捨てた。
馬鹿みたいだ。
青木さんは僕のことを好きなんじゃなくて、ただの責任から僕の相手をしている。セックスを教えてしまったから、面倒を見る。ノラ猫に餌をやってしまったから、餌を与え続けているようなものだ。ノラ猫は飼い猫になれる可能性があるのに、そうしてくれない。
マイナスなことを考えているとよくないことを呼び寄せる。それが証明されたように、下宿先が水漏れで滞在できなくなってしまった。踏んだり蹴ったりだ。
行くところがないから、探偵社の隅っこに居座ることにした。
「マスヤマ浮浪者だなあ」
「浮浪者じゃないです。運がないだけ」
榎木津さんは僕の寝床を覗いて面白がっていた。
「コケシ君のところに行けばよいだろ」
それを当たり前のように云うから、僕は胸が詰まってしまう。
「出来たらいいんですけど」
「いつもの図々しさで頼み込む。それがいい」
「僕にだって悩むところはありますよ!」
怒鳴ってしまった。怒られると思って顔を上げると、榎木津さんは静かにそこにいた。絵になる沈黙は、しょうがないという口調で破られる。
「明日、本屋のところにいってきなさい。つまらない仕事も片付く」
「はあ」
「もっと元気に返事しろ」
「あ、ありがとうございます」
「よし、寝る。君も早く寝る」
榎木津さんはそういって寝室に行ってしまった。多分慰めてくれたんだと思う。息抜きに中禅寺さんの話を聞くのもいい。猫もいるし関口先生もいるかもしれないし――。
人を集める京極堂の座敷を思い浮かべながら、僕はねむりについた。
暗い探偵社の鍵を開けて、ひっそりした部屋に入り込む。和寅さんも寝たのだろう。応接間の端っこに、小さくなって僕は泣いていた。多分酷い顔をしている。明日、なんでもない顔をして仕事をしなければいけない。僕は涙を腕にしみこませて、鼻水を啜った。
世界がこんなに暗いなんて知らなかった。
「何だマスヤマ、コケシ君のところにいたんじゃなかったのか」
寝巻の榎木津さんが僕を見つけて、水を飲みながらしげしげと眺める。きっと僕の記憶を見ているのだろう。
「こないだまでしだらのない顔でうふうふわらってたじゃないか。同棲はふんにゃらほんにゃら」
「まあそれは榎木津さんのおかげなんですけど……結局僕は駄目なおとこなんです」
「それは間違いないな」
榎木津さんが水を飲み干して、流しにコップを置いてまた僕を上から見下ろす。暗いから光る眼だけが僕を見ている。
「小賢しいことうだうだ考えてないで素直になりなさい。新宿でも上野でもなんなら水道橋にもいって、ちゃんと会って、ちゃんと言葉でいうんだ」
「でも」
「でももだっても禁止。うじうじも禁止。布団をやるから早く寝る。僕も寝る」
「わあ」
布団が吹っ飛んできた。僕が埋まっている間に、榎木津さんはいなくなっていた。嵐のような人である。過ぎ去った後に、宣託が頭の中でぐるぐる渦巻く。
「正しいなあ」
神の宣託なのだから、正しくて当たり前なのだ。少しだけ心が落ち着いて、涙も止まっていた。
僕は、青木さんが、好きだ。
「僕の、恋人に、なって」
青木さんは真剣な顔で、でもちょっと照れてそう云った。
「恋人ごっこじゃなくてですか」
「益田君」
笑って見せる。ちょっとくらい意地悪してもいいと思った。
「僕、正直、嬉しいんですよ」
夜空を見上げた。あの日と違って月は欠けていて、未完成を夜に描く。
「ずっと青木さんのこと考えてた」
青木さんの手に触れて、その小指にこゆびをひっかける。あたたかかった。
「僕が最初から、好きだって、云ってたら、こんな回り道しなくて良かったかなあ」
「益田君、最初から好きだったの」
「そうなんです。気が付きませんでした?」
「僕はてっきり……」
「青木さんて鈍いところありますよね」
「ごめん」
暗闇で互いの顔がよく見えない。それくらいが丁度いいのかもしれない。
「お互い、臆病で鈍感だったんです」
小指を手繰り寄せられて、指を絡めとられて、僕らは繋がる。夏虫が鳴いて、夜を彩っていた。
「僕の部屋、来る?」
「誘ってます?」
「誘ってる」
二人ともかけた月を見ていた。これからすることはわかっている。
「ええ」
立ち上がって並んで歩きだした。つないだ手から、互いの血液が交わる気がした。
部屋に入って戸を後ろ手に閉めて、僕らは抱き合ってキスをした。甘く蕩けるようなくちづけ。呼吸さえ惜しい交わり。
「青木さん、すき」
「ああ」
「好きって、」
「すき」
畳んだ布団に上半身を預けて、互いに服を乱していく。二人の高まりは形を成していて、僕はそれを愛おしそうに愛撫した。
「しゃぶっていい?」
「いいよ」
亀頭をぐりぐりと撫でつけてから、僕はそそり立った肉を咥えた。唾液を絡ませて、肉がぬらぬらと光る。髪を耳に括りつけながら、喉の奥まで性器を飲み込んだ。
「ん」
「気持ちいいよ」
「ふ」
裏筋を念入りに舐めて、鈴口を虐める。口の中で硬く大きくなる肉を、何かの生き物をなだめるように擦った。陰嚢を揉みしだくと、青木さんは溜息をついた。気持ちいいなら良かった。
くちを離した性器は、十分に濡れていて鈍く光っている。
「もう、ほしい」
「いいの、」
「一つになりたい」
僕は足を抱えて、アヌスをヒクつかせる。きっとおんなだったら濡れているのだろう。
「益田君、」
「ん」
「息吐いて」
「あ、あ、ひ」
僕と云う閉じた世界に青木さんが入ってくる。ぴりぴりとひびを入れて、世界が壊れていく。その瞬間が好きだった。自分が変えられていく。愛しい人によって進化させられていく。
「ん、ぐ」
「痛くない?」
「へいき」
硬くて太い肉を孕んで、このまま一つに溶けあえればよかった。そうしたらたましいと魂はひとつになって、永遠に一緒に漂えるのだろう。
「あっ、あ、あおきさん」
「ここにいるよ」
ぐちゅぐちゅと揺らされる度に色めいたこえが漏れ出て、淫らになっていく。痛みと快楽が綯交ぜになって、僕の中の感度が高まって弾けそう。
「は、ますだくん」
濡れた吐息が触れて、青木さんが僕のくちを塞いで、僕らはひとつながりの輪になる。揺らされながらキスをされると、こんなに気持ちが好い。僕はぴったり触れる青木さんの肌を感じながら、その広い背中に手を伸ばして彷徨う。愛しかった。ずっと傍にいてくれる、きっと、死ぬまで、僕らは一つだ。
「あ、あっいきそ、う」
「僕も」
「あおきさん、青木さん」
「益田君」
立ち上がった僕の性器を青木さんは触りながら、僕を貫く。中と外から刺激を与えられてどんどん上昇させられていく。
「好きだよ」
「ふあ」
「すき、ますだくん」
「あっ!」
体がしなる。腹が濡れて、臍に精液が溜まって、射精したことを知る。青木さんの陰茎もどくどくと脈打っているから、きっといま僕の腸の中を青木さんの精液が泳いでいる。息を切らして、僕らは抱き合っていた。じんわりと広がる快楽の余韻が、徐々に終息していった。
「気持ちよかった?」
青木さんが真面目な顔で聞くから、笑ってしまう。
「今までよりも、良かったですよ。野暮ですね」
「ごめん……」
そんな真面目な彼に僕は笑ってキスをした。
「もっと、恋人に、なりましょう、ね」
僕が締め付けると、抜いていない青木さんが反応して、また大きくなる。青木さんは照れを隠すように、僕の真似をして笑ってキスをしてくれた。
きっと始まった夜は、まだ終わらない。